瓦といえども、地方によって特長はさまざま。
そんな瓦の種類について、お話ししたいと思います。
まず弊社でも頻繁に使うのが三州瓦。
三州瓦とは、愛知県の高浜市や碧南市などがある三州地方で採れた土を使ってできた瓦。
現在、日本の瓦シェアの約7割を占めています。
いぶし瓦(三州)
実は弊社もこの辺が出身。 東京から一番近い大きな産地ということもあり、多用しています。
三州瓦のいぶし瓦の特長は吸収率の低さ。
一般的に、屋根材の中で最も強度があるといわれている瓦。
昔から日本にある製品のため、JIS規格にもなっています。
瓦の中には粘土瓦、その中にも陶器瓦(お茶碗みたいに表面に釉薬が塗られているさまざまな色がある瓦の総称)といぶし瓦(お寺や神社などで使われている銀色の瓦)の2種類があります。
JIS規格では、陶器瓦の吸水率は12%以下、いぶし瓦の吸水率は15%以下と規定。
中でも三州瓦は、メーカーにもよりますが、いぶし瓦の吸水率が5%くらいだったりするのです。
また三州地方は、大きな窯元(瓦メーカーのこと)が多く、工場の設備も最新鋭。
地方柄、トヨタ自動車が近いこともあり、工業製品などの技術分野に強く、インフラも発達しているため、トンネル窯という巨大な窯で規格通りの寸法、品質の瓦を素早く大量に生産することが得意です。そのため、精度の高い良質な瓦を仕入れることができます。
といっても、ほかの産地も負けていません。
例えば、寒い地方に強いといわれているのが島根県の石州瓦。一般的に、石州瓦や石川県の能登瓦、新潟県の安田瓦など日本海側の豪雪地帯の瓦は寒さに強いです。寒い地方では吸水率が低い瓦の方がいいといわれています。
能登瓦はほぼ真っ黒という感じで、黒光りでは一番有名。
安田瓦は黒いですが、少しねずみ色がかった独特な鉄色をしています。
安田瓦
釉薬は普通表面にしか塗りませんが、能登瓦や安田瓦は瓦の裏側にも塗るため、非常に強いです。
普通の釉薬瓦の裏面
安田瓦の裏面
また奈良県の奈良瓦や岐阜県の岐阜瓦、兵庫県の淡路瓦など、お寺や仏閣が多い地域の瓦はお寺や神社に強いイメージがあります。
いぶし瓦(淡路)
愛媛県の菊間瓦のいぶし瓦も、お寺や文化財などによく使われており有名です。
土の具合や焼き方に強みがあり、造詣の深さを感じさせます。 (一般の方が見て分かるかどうかは微妙なラインですが……)
いぶし瓦(菊間)
お寺や神社でよく使われるいぶし瓦は、極端なことをいってしまえば、違いはほぼ無いのですが、屋根職人からしてみれば、土の表面の粗さや表情の冴え、色味、反り、形、大きさなど微妙に異なります。
製品によって無骨な感じがしたり、シャープに見えたりするのです。
またお寺や神社では、オーダーメード品を扱うことも増えますので、
大量生産よりも1枚1枚瓦を手作りできる産地やメーカーが選ばれることもあります。
個人的には、いぶし瓦は全部好きですが、中でも淡路瓦は土のきめが細かく美人さんができやすいのでお気に入りです。 ほかにも、安田瓦のいかにも重そうな独特の黒光りや、石州瓦の中でも来待石(きまちいし)という石を使った釉薬の瓦はかなり無骨な感じですが、味があって好きです。また安田瓦の中でも赤は、紫色っぽいほかでは見られないような色をしていてキレイですよ。
来待石の釉薬を塗った石州瓦
石州赤瓦
安田赤瓦
産地の違いというのは、一言でいうと、使用する土の違い。
土の耐火温度や目の細かさにより瓦も少しずつ変わります。
例えば、1000度で焼くと溶けてしまう土もあれば、1300度で焼いても溶けない土もあります。
産地によって大きく異なるのです。 瓦屋はその微細な違いを見抜き、お客様に最適な瓦を提案します。
瓦屋からしてみると、産地によって瓦は大きく異なります。 それなので、瓦を選ぶ際には、ぜひ産地にもこだわってみてくださいね。
次回は、「職人からみた“良い瓦”の定義とは?」についてお話しいたします。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜昭和二十六年創業。屋根に関する製造・販売・工事の全てを経験。
屋根専門石川商店の三代目、1級かわらぶき技能士
石川弘樹(いしかわひろき)です。
【趣味】 ワンピース(マンガ)
【目標】 瓦割り世界チャンピオン
【ブーム】 なんだか断りそうだな、、、
【困り事】 寝ても寝ても眠い病
屋根専門石川商店HP:riverstone-roofing.com
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