瓦屋根のラバーロック工法とは、瓦と瓦を接着剤でくっつける工事のこと
瓦屋根の修理とかリフォームを調べていたり、見積書などで見かける『ラバーロック工法』ってなんだろう? って思ったことありませんか?
ラバーロック工法が一般的な名前ですが、ラバーロック工事、ラバー工事、接着工事、などとも呼ばれています。
こんな具合に瓦屋根の1枚1枚の瓦のすきまを接着材で埋めるようにくっつける工事です。
ラバーロックは詐欺? 強い? 弱い? 屋根業界でも賛否両論
インターネットで「瓦屋根 ラバーロック」と検索すると、批判的な記事も肯定的な記事も出てくるでしょう。
もちろん、ぼくは批判的。
こんな記事を書いているくらいですから。
でもどれも屋根屋としての経験とカンによるもので、証拠がなかったのです。ごめんなさい。
絶対に自信はあるけど、ウソはつきたくない! 意見の食い違うのは証拠がないからだ! ということで、今回は石川商店と縁のある愛知県の屋根屋さん『神清』さんとの共同研究として、愛知県の産業技術センター三河窯業試験場にて、ラバーロックの耐震試験、耐風試験を行いました。
国立研究開発法人 建築研究所監修の公式な実験ってどんなもの?
今回、産業技術センター三河窯業試験場で行なった公式な実験ってなに? という疑問をお持ちの方のために実験方法について少し解説します。
行った2つの実験をかんたんに説明すると、
国の機関が監修した屋根の強度を測る2つの実験だよ〜
1,垂直に建てた瓦屋根をぐるぐるグルグル回して、落ちなければ地震に強いよ〜
2,上から何回も何回もめっちゃくちゃ引っ張って、はがれなければ強風に強いよ〜
という実験です。
本当にそれが正式なの? と思ったあなたのために、正式な解説もしておきますが、動画を早く観たいという方は飛ばして良いと思います。笑
国立研究開発法人 建築研究所とは?
かんたんに言うと、世界的に有名な地震の専門家です。
詳しくは、建築研究所のホームページから引用しました。
国立研究開発法人建築研究所は、国土交通大臣から示された中長期目標に基づき、公正・中立の立場で、所内の高度な実験施設を活用し、住宅・建築・都市計画技術に関する研究開発、地震工学に関する研修等を総合的、組織的、継続的に実施する機関です。
研究開発の成果は、国が実施する関連行政施策の立案や技術基準の策定等に反映され、それらが民間の技術開発や設計・施工の現場で活用されることにより、国民の安全の確保、健康で快適な居住空間の実現、省エネルギーや環境への配慮等持続可能性の確保、消費者への安心の提供など、我が国の住宅・建築・都市の質の確保・向上に貢献します。
また、地震工学に関する研修は、開発途上国の技術者等の養成を通じ、世界的な地震防災対策の向上にも貢献しています。
専門家が監修した耐震強度を測る実験と、耐風強度を測る実験が以下の2つです。
1『棟部耐震性能試験(鉛直回転法)』
垂直に建てた瓦屋根にを鉛直方向に、回転速度1分間に3回転の速さで10回転させます。すると、阪神淡路大震災の地震と同等の1Gの加速度が実験体に掛かります。それに耐えるか耐えないかで震度7でも耐える性能があるかないかが判定される実験のことです。
この実験の結果が合格になると、瓦屋根の耐震ガイドライン工法と同等の強度と認定されます。このガイドライン工法で瓦屋根のリフォームをすると、鳥取県や群馬県高崎市では家の耐震化工事に認定されているので助成金が出るなど、地震や台風に強いだけでないメリットもあります。
2『耐風圧性能試験(150サイクル法)』
測定したい屋根の部位を通常通りに4段4列ほど施工し、基準風速、屋根平均高さ、屋根の部位を基準に計算された風圧力と同じ力で、上から引っ張り元に戻す。これを150回繰り返す実験のことです。
今回調べたかったのは、ラバーロック工法の訪問販売による押し売りが多い都市部を対象にしたかったので、
東京の市街地や愛知県の市街地で一番弱い風速で
一般的な2階建ての住宅で
屋根で一番風の影響が弱い部分
という設定をするため、
基準風速32m/s
屋根高さ7m
部位は平部
とし、風圧力相当の力で引っ張りました。
結果は不合格。証明書が必要であればご自由にどうぞ
先に結果を言ってしまいますが、タイトルでも言っているのでお許しを。
そうなんです。不合格でした。2種類3つの実験を行ったのですが、すべて不合格。完敗です。
ご丁寧に不合格の証明書まで発行されましたので、必要であればご自由にお使いくださいませ。
ラバーロックはやっぱりダメだった。実験動画を見れば一目瞭然
前置きが長くなってしまいましたね。お待たせしました! さぁご覧くださいませ。
【動画情報】4分4秒
0:31〜 平部の耐震試験
1:20〜 棟部
3:26〜 平部の耐風試験
ラバーロックと聞いたら『無意味な工事』と思い出してください
いかがでしたでしょうか? イメージしてたよりも地味な実験ですいません。
でもラバーロックが無意味な工事ということは分かって戴けたと思います。なにしろ、耐震試験試験では試験前に落ちちゃうし、耐風試験では1回目で剥がれちゃいましたからね。今後は、どんなに頼もしそうな業者さんでも「瓦屋根にラバーロック」と言ってきたら、上にある不合格の証明書を見せてあげましょう。ラバーロックの強度は弱いことをご存知ないのかもしれませんからね。
瓦屋根の正しい耐震化工事は『ガイドライン工法』です。この試験に合格した施工方法だけが、瓦屋根の正しい耐震化工事です。瓦屋根の耐震化工事を業者さんにお願いする時は「ガイドライン工法でお願いします!」と言いましょう。
いやぁ、それにしても焦りました。というのも試験前に落ちてしまったので、落下する瞬間をビデオに納めることができなかったのです。その為だけに実験したと言っても過言ではないのに。動揺してカメラを、上に下に上に下に、と動揺してしまいました。正面から撮影していた、神清さんのおかげで助かりました。
- 創業75年、屋根専門石川商店の三代目。石川弘樹(いしかわひろき)です。
- 【肩書】
- 東京都瓦工事職能組合 震災対策委員長、日本屋根ドローン協会代表理事
- 【資格】
- 1級かわらぶき技能士、瓦屋根工事技士、全日本瓦工事業連盟認定 瓦屋根診断士、全日本瓦工事業連盟認定 耐震化講師、耐震プランナー、増改築相談員、古民家鑑定士、ホームインスペクター(住宅診断士)、ジュニアリフォームソムリエ、リフォームスタイリスト1級、リフォーム提案士、ライフスタイルプランナー
- 【趣味】
- ワンピース(マンガ)
- 【目標】
- 2級建築士、瓦割り世界大会初代チャンピオン
- 【ブーム】
- ブラッククローバー
- 【困り事】
- 平均睡眠時間9時間
石川商店からのお願い
記事を最後まで読んでいただきありがとうございます。
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また、もしもっと知りたいこと、分かりづらかったことなどあれば下のコメント欄にご意見いただければと思います。
日々屋根にお困りのお客様にとって必要な情報をお伝えするために、ご参考にさせて頂きます。
昨今の大型台風に恐怖を感じているものです。
築40年の和瓦、切り妻造りの愛着のある我が家ですが今回の台風20号のあと
訪問業者からの指摘で瓦の楚々がズレていると言われよく見ると屋根の端部分の
一部が多少飛び出ているところがありました。
ツライチでないことは確かでした。
瓦単品のばらつきで多少のサイズ違いはあるのでしょうか
佐々木 さま
ご連絡遅くなりました。
40年前の瓦であれば、大きさにバラツキは結構あると思います。
現在の瓦でももちろん多少のバラツキはありますが。
屋根の端部分で飛び出ているのが三角屋根の横側であれば、程度によりますが、多少であればあまり気にしなくてもよいでしょう。
また軒先であれば、瓦が割れたりして斜めになっている可能性もあります。その場合はあまり放っておくのはよくないです。
いずれにしろ40年1度もメンテナンスしていないのであれば、そろそろなにかしらのメンテナンスが必要なのは間違いありません。
あとは今の家にあと何年住むのかを明確にしていただき、その年数に必要なメンテナンスを行う、ということになると思います。
また何か新たな疑問などございましたら、お気軽にご相談くださいませ。
石川弘樹