【スレート屋根修理】塗装しても屋根の寿命年数は変わらない理由

井上 利里子
井上 利里子
  • まだまだ収束が見えない新型ウィルスですが、騒動とは裏腹にのどかな青空とポカポカ陽気がうらめしいです。どんな状況でも暮らしは続き、屋根への悩みや心配も時を選ばず起こってしまいます。少しでも悩む時間が少なくて済む一助になればと、日々いただく屋根に関するご相談や質問を皆さんと共有していきたとおもいます。

    今回は棟部分で、『スレート屋根材』の不具合をカバーするためにベストな施工はどれかというお相談です。

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昨年、築10年の住宅のスレート屋根材が一枚落下し、その時は自宅を建てたメーカーから紹介された屋根屋が来て、その剝れた部分を補修。今年外壁塗装を考えているとのことです。

昨年修理した箇所から『いずれ雨漏りの可能性あり』で塗装勧められる

外壁塗装にあたりリフォーム会社2社に見積もりを取る際、屋根も点検してもらったそうです。その時2社ともから昨年の修理箇所をみて、「この施工方法だと今後雨漏りに繋がる」と指摘されたそうです。

その他ひび割れ、反り、欠け、撥水性の低下、棟の釘浮き等。

今回指摘された昨年の修理箇所はどんな施工方法だったかというと、抜け落ちた場所に新しいスレートをはめ込み、表面から釘を打ちコーキング剤を入れてあったそう。点検業者の説明によると、そのコーキング剤が劣化したらいずれ釘穴から雨漏りが起こる可能性があると。

両社とも今の状況には塗装が有効といわれたそうですが、ご相談くださった方は築たった10年で屋根材が剥がれてしまうのに、塗装だけで今後もう10年持つとは思えないし、他の屋根材も剥がれないか心配ということで弊社に下記のご質問をいただきました。

塗装だけで劣化を止められるのか?
他の屋根材の落下も食い止められる?
次なる落下を防ぐには葺き替えやカバー工法が必要?

今回の状況でどんな修繕がベストか。塗装または他の施工?

まず社内でリフォーム会社の指摘した内容と相違ないか聞いてみると、その2社のリフォーム会社の説明通りで表面から釘打ちはプロならあり得ないことだそうです。

なんと!

屋根屋が勧めるメンテナンスは

塗装よりなにより、築10年で落下してしまうという、落下した原因の根本を探ることが大事になってきます。

屋根の下地板が傷んでしまってなのか、スレート自体の強度問題なのか、これらの原因と理由を突き止めてから最善の修理を検討する流れです。下地が痛んでいる状態ではカバー工法はできません。

まずは釘が表面から打たれた周辺部分の屋根材を一度剥がして止水処理し、屋根材を戻すというのが良いけれど、実際は防水シートと屋根材が粘着でくっついてしまっていて途中から抜けないことがあり、上から順番に剥がしていく必要があります。

いずれにしても今回の場合、『表面からのくぎ打ち』という屋根のプロならありえない施工だとおもうので、紹介者の建築会社に修理とやり直し費用は払ってもらう交渉をしたほうがいいでしょうという社内の見解でした。

塗装は屋根の防水機能を高めない

屋根塗装についてスレート屋根のメーカーの施工マニュアルにもありますが、塗装は美観の向上ためというのがメインです。撥水塗料だったり、塗装によって強度を増したりすることが雨漏りを防ぐには直接関係しません。その理由は屋根の構造にあります。

雨水を家の中に入れない最後の砦は防水シート(ルーフィング)

塗装でスレートの屋根材自体の撥水性や耐久性はあがり寿命がのびたとしても、そもそも雨水を完全に家の中へ入れないのに必要なのは防水シート(ルーフィング)が健全に機能していることです。

9割屋根材で雨水を受けて下へ流し、残り1割のほんの少し入り込む雨水を防水シートがカバーすることで家の中に雨水は入りません。この防水には耐久性の寿命があり、それが約30年。防水シートは塗装で強度が増したり、寿命が延びることはありません。

スレート瓦

防水シートの寿命が屋根材の交換目安

屋根の土台となる板に全面防水シートを接着させ、その上にスレート屋根材を貼り釘を打ち留めるという構造になっています。

屋根材を固定するのに打ち込んでいるビスや釘にまとわりつき止水していた防水シートは、30年を過ぎてくるとその機能の耐久性が落ちます。そのまま放置していると釘穴と防水シートにできた隙間から雨水が侵入する恐れが出てくるため交換します。そのタイミングで屋根の葺き替えをします。

ペタっと屋根材と防水シートと下地板は接着しているため、スレートは瓦と違って葺き替え時に再利用できません。

 

スレートの『ひび割れ』や『欠け』の最適な修繕方法と費用目安

小さなひび割れや欠けは約5年ごとに点検し都度接着剤で補修していくと、台風や強風でも欠けて飛んでいく心配がありません。

その料金は、例えば建坪30坪(100㎡)の屋根で、点検と小さなひび割れの接着作業で3万円前後。

ひび割れのできる原因

なぜひび割れが出来るかというと、新築で建築中の作業やアンテナ工事などなど、作業員が屋根に上がるたびにできる小さな踏み割れがほとんどです。風雨などにさらされながら年月が経つとだんだんとそれが目に見える割れになっていきます。

欠けて飛んで行ってしまっている場合には、部材を形成し貼り合わせます。

 

『釘の浮き』は棟の交換を推奨、その費用目安

今回のお宅は築10年で釘浮きをしているとのことですが、釘が浮くのは屋根のてっぺん部分『棟』の下にある木材が腐食して起こるケースが多いです。

通常交換目安が15年くらいですが、下地の木材が劣化すると打ち付けている釘がスカスカと浮いてきてしまいます。こうなっている状態でいくら新しく釘を打ち込んでも意味がなく、強風で棟が飛んで行ってしまうことが昨年の台風でも多くありました。最善な方法は棟を交換することです。

防腐処理された木材または樹脂製の不ラスチック木材にし、新しい棟板金を設置。

費用は同じく30坪(100㎡)で計算して10~30万円ほど。外壁塗装と合わせてやると、足場代や安全対策も節約になります。

スレート棟板金

まとめ

塗装では屋根の問題解決にはならないので、スレート落下の根本原因を探り適切な施工と、ひび割れの接着、棟交換などすることでカバー工法や築年数が浅い葺き替えもすることなく、屋根本来の葺き替え時期を迎えられればとおもいます。

それではまた

 

 

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日々会社に舞い込むお困り事や作業内容を基に、
いつか立派な屋根屋スタッフになれる日を夢見て勉強中。

井上 利里子(イノウエ リサコ)
【ニックネーム】 Ri-chang
【最近】 マスクづくりマイブーム

いのうえりさこです

屋根専門石川商店HP:riverstone-roofing.com

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  1. お名前 : OS  

    新築後14年経過していますので、屋根の塗装を勧められることはよくありますが、棟の交換を勧められることはあまりないと思います。

  2. お名前 : 石川弘樹  

    OSさま、石川商店の石川弘樹です。

    ・屋根の防水の交換時期が、30〜40年。
    ・棟部分が、台風などで被災しやすくなるのは、築25年以降。

    なので、防水の交換時期である、30〜40年の半分の、
    築15〜20年を目安に、予防的に、棟部の交換をおすすめしています。

    以上、参考になれば幸いです。

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