カバー工法とは、重ね葺き(かさねぶき)とも呼ばれ、端的に言うと屋根材の上に新しい屋根材を重ねる工法です。
古い屋根材をいちいち剥がさずに、屋根材の上から新しい防水シートを貼り、そして新しい屋根材を敷くので、やりようによっては防水性能も上がるのですが屋根は重くなります。また、万が一、土台部分の修繕が必要になった時は、作業量が二倍になる分、費用がかさむといったことも考えられるでしょう。
そんなカバー工法ですが、スレート屋根のひび割れが酷い時に対策として提案されることが多い工法です。
でも本当にそれが最適な工法なのか?
なぜこの工法が用いられるのか?
そのような疑問に答えるべく、カバー工法について石川さんにお聞きしました。
本記事はインタビューを記事化したものです。
みんなの屋根の相談所|石川商店 – YouTube
※前回のインタビュー記事はこちら
本記事の目次
カバー工法か葺き替えかの判断ポイントは「屋根の下地」
大久保―――
葺き替えかカバー工法かは何で判断しているのでしょうか。
石川―――
基本的には、屋根の下地の強度があるかないかで判断しています。しっかりと強度がある場合はカバー工法で、ない場合は葺き替えを提案します。新しい屋根材も今ある屋根の下地に固定するので、弱っていたら釘やビスが効かないので台風のような共有で飛んでいってしまう危険性があるので、よく確認が必要ですね。
昔ながらの方法で言うと、実際に屋根の上を歩いている時に踏んでたわみがないかを確認します。ですが、感覚的なことが多いので、実際にビスをうって引き抜く強さで強度確認もしています。感覚的なこと、数値的こと、両方を確認してカバー工法できるか判断しているという感じです。
大久保―――
屋根の上を歩いて感覚で知るというのが、職人さんらしくてかっこいいなと思いました。
石川―――
それはいいところもあり悪いところもありですね。確かに数字だけだとビスをうって引き抜くので、屋根にダメージがあるのでそこまで数をうてないし、弱そうなところをピックアップして狙ってうつしかないので、たまたま選んだ箇所によって数値は変わってしまいます。職人の感覚と合わせて確認し、あとは屋根裏に潜って雨漏りがないかも確認します。
スレート屋根のひび割れ対策にカバー工法が最適なの?
大久保―――
もともと、スレート屋根のひび割れから広がっている話なのでお伺いしますが、やはりスレート屋根のひび割れにはカバー工法が最適な方法なのでしょうか。
石川―――
そうですね。一番合理的な方法だとは思います。
大久保―――
コスト的にもおさえられますか?
石川―――
コスト的にはおさえられるとは思いますが、ただどんな時でも最適だというわけではないのです。
一番合理的な方法で安心を得られる方法だとは思いますが、根本的には、カバー工法とか葺き替えという作業は防水のやり直しになります。屋根の定期的な周期で言うと本来は30~40年たってから行う一番大きなメンテンナンスなのです。
それを築15年ぐらいの段階で、ひび割れ対策にカバー工法をするとなると、本来のメンテンス周期としては早くなってしまいます。
大久保―――
確かに。そうなりますね。
石川―――
大雑把に言えば、本来はまだあと15年ぐらいは(防水が)もつはずです。だからそのタイミングでカバー工法をしてしまうのは、将来的に長い目で見ると費用がかかってしまう場合があります。
あと、カバー工法が向かない家というのもあって。
大久保―――
向かない家とは?
石川―――
天窓のある家です。
天窓のある家でカバー工法すると…
石川―――
天窓も30年ぐらいもちます。築15年ぐらいで屋根のひび割れが発生し、カバー工法をした場合、天窓は何もしないのが一般的でしょう。問題はその後、天窓が30年たってダメになった時、カバー工法で使った屋根材はその時点でまだ15年ほどもつはずですが、天窓は屋根材の下に埋まっているのでカバーした分もめくって作業しなくてはいけなくなります。メンテナンス性が悪く作業費も多くかかってしまいます。
大久保―――
ということは天窓のある家ではカバー工法よりも修繕とかの方がいいでしょうか。
石川―――
そうですね。費用との相談になりますが、一緒に(天窓を)交換してしまうというのもあります。ただ屋根材の下に埋まっているので、屋根材をめくり天窓を交換して、屋根材を戻してそこからカバー工法をします。
屋根材は部分的に剥がすよりも、全部剥がしてしまう方が簡単で作業費も安くなります。だからカバー工法だとひび割れの修繕が安くなったとしても、天窓の交換費用は高くなるというわけですね。葺き替えの方が効率いいです。
大久保―――
天窓があると複雑ですね。
石川―――
天窓のある家は、天窓の期間でメンテナンスを推奨しています。
大久保―――
天窓のある家以外で気をつけることはありますか。
石川―――
そうですね。煙突だとか屋根に障害物がある家は難しいですね。屋根が複雑な形になるほど難しくなってきます。
ひび割れ対策でカバー工法以外にできる処置は?
大久保―――
スレート屋根のひび割れ対策にカバー工法以外に有効な方法はありますか?
石川―――
石川商店の場合は三段階で設定していて、カバー工法と葺き替えの前に1段階目として「補修」があります。だいたい屋根全体の5%前後のひび割れだったら修繕にしていますね。今のところは費用をおさえたいってことであれば、ひび割れ補修にして、より安心したい場合はカバー工法とか葺き替えを提案します。
大久保―――
ちなみに築15年ぐらいでカバー工法をした後は、次のメンテナンスは15年後でしょうか。
石川―――
いえ、基本的には施工してから30年ぐらいです。カバー工法をする時に、屋根材の上に新しく防水シートを貼ります。そうすることで、防水シートの耐久性の分だけもつので30年ぐらいです。
スレートのひび割れ対策はカバー工法だけではない
- 石川―――
カバー工法が一番という方も多いですが、僕はそうじゃないと言っています。だからといって反対しているわけでもなくて、単に、なにがなんでもカバー工法!というのは違うと思っているだけです。
大久保―――
お客様の要望にあわせて提案しているということですよね。
石川―――
そうですね。カバー工法と葺き替えの違いでは、「屋根の下地」が大事だと伝えましたが、基本的に安心できるのは葺き替えです。例えば、今雨漏りしている屋根があって、カバー工法すればとりあえず雨漏りは止まりますが、万が一カバーした屋根の防水機能がだめだった場合は、根本的な問題が解決していないため、また雨漏りする可能性もあります。
葺き替えは雨漏りの根本から修繕したり、屋根下地の補強ができるので、より安心したいなら葺き替えの方がいいのかなと思っています。
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石川商店ではこれからも日々情報を発信し、お客様の声に耳を傾けていくので、屋根の悩み事はお気軽にご相談ください。
石川さんへのインタビュー、来月もぜひお楽しみに!
最後までご覧いただきありがとうございました。
【参考記事】スレート屋根で、カバー工法がむいてない家、葺き替えや部分補修がよい家
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