前回のインタビューでお届けした石川商店の災害予防パックの話から広がり、今回は予防工事についてお話を聞きました。
内容を大まかにお伝えすると、地震や台風といった災害で被災しないため、石川さんがこれまでの経験や実験によるデータをもとに考え出した災害予防のノウハウを全国に広めたいというものです。
屋根屋本来の役割を考え、壊れた屋根を修理するのではなく、そもそも壊れないように予防すべきではないのかと思った石川さんは、屋根の予防にこだわります。
そんな石川さんに、屋根の予防工事とは具体的にどんなことをするのかをお聞きしました。
本記事はインタビューを記事化したものです。
本記事の目次
屋根の予防工事とは?地震や台風でも瓦が落ちないために必要なこと
- いつ来るか分からない大きな災害と言えば地震と台風です。地震に対する揺れ対策と台風のような強風や暴風への対策を、しっかり行うことが予防工事になります。ただ、例えば瓦屋根のガイドライン工法のように、一般的な指標に基づいた予防工事は地域によって判断する基準が複雑だとのこと。そんな現状に対策するため、石川さんが考えたのがどこでも「最強」の工事をするというものでした。
石川―――
屋根の予防工事とは、国内で発生した過去の災害結果から、被災が多かった場所に対して重点的な処置を施す工事のことです。屋根材ごと、築年数ごとに傾向があるので、過去の結果に基づき、災害が来ても大丈夫な状態にするためのメンテナンスを早めに行います。
ちなみに屋根材ごとの違いとは、瓦屋根とそれ以外の素材の屋根(スレート・アスファルトシングル・金属等)で分けられます。ただ、被災する部位は、どの屋根材を使用していても、またどのような屋根の形をしていても基本的には同じです。
強風や地震で受ける影響というのは、屋根の中央部分を基本の1として考えると、軒先が2倍、両端が2.5倍、棟が5倍ぐらいの影響を受けます。どの屋根材でも関係なく、被害を受けやすい部位には傾向があります。
ただ、被害は同じでも屋根材に合わせたメンテナンスが必要です。瓦以外の素材は、地震よりも強風による被害がほとんどなので、地震で揺れて壊れるということはあまりありません。地震対策が必要なのは瓦屋根で、瓦に関しては地震による揺れと台風などの強風、両方への対策が必要です。
その上で僕が考えている災害予防パックは、どの地域でも「最強」の予防工事を全国でやるというものです。
というのも、工事にも色々とレベルがあり、例えば瓦屋根だと、風速地域、階高、土壌が弱いなど色々と項目が多く、この地域ではこの工事をしてくださいというガイドライン工法があるのですが、内容が複雑で難しすぎるんです。
諸々決められた指標に基づいて計算し、釘を2本打つ、交互に打つ、など色々あってとにかく手間がかかるので、どこでも常に最強の工事をすれば分かりやすいと思いました。
やることは大変になりますが、災害予防なので最強にすれば当然安全性が高くなる。よく分からないことに時間かけるよりも、単純ですがもっとも簡単かつ強い予防ができます。
「塗装」はメンテナンスとして効果的なのか?
屋根の予防工事は、地震や台風が多い日本にとって大切な対策です。ですが現実として、屋根の予防工事に興味関心のある人は多くありません。ただ、雨漏り対策として「うちは塗装したから特にメンテナンスは必要ない」という意見や「塗装すると防水性が保てる」という業者の話があります。前々から感じていた「塗装」のメンテナンス性について、今回の予防工事の件にちなんで聞いてみました。
石川―――
僕にとってメンテナンスとは「機能の維持保全」のことで、リフォームは「機能の追加」だと考えています。(塗装は)災害予防という部分では本質的ではなく、あくまでも見た目、外観とかデザインとかの役割です。塗装は機能の追加なので、元々の機能(住まいの安全性)に与える影響はあまりありません。もちろん耐震・耐風リフォームとなると話は違いますが、漆喰や塗装はあくまでも見た目のためなので、雨漏り予防としての効果はないと言えます。
全ての塗装屋さんが言っているわけではありませんが、中には、屋根材表面の撥水性を防水性と言っていることがあります。屋根材の中に水を入れない機能を撥水性というのですが、それを防水と主張しているんですね。
屋根材の撥水性と屋根の防水性は関係なくて、防水性と主張すると屋根の雨漏りがしないと勘違いを招くことになるから、撥水と防水は使い分けて欲しいと思っています。単純な塗装では災害予防になりません。
と言うのも、災害予防を誤解してしまっている人もいるんです。お客様の話を聞いていると、10年に1回、塗装をしているから何も対策はいらないって言われることもあって……。塗装をすることはもちろん否定しないですが、例えば被害の大きい棟に対して何もしていないので、(せっかく綺麗にした屋根が)被災してふっとんでしまいます。それでは元も子もないなと。
地震・台風対策の予防工事の金額は?瓦やスレートなど材料による違い
- 適切な予防工事を行うことは、いざという時の安全のために必要なことです。ただ、分かっていても屋根の工事は高額なので、すぐにはできないと思う人は多いと思います。石川商店が提案する災害予防パックで、一番簡易な対策だと5万円でできるとのこと。肝心の効果はどうなのかも含めて教えていただきました。
石川―――
災害予防パックは3段階になっていて、例えばスレート屋根で築15年の家のケースだと、松がカバー工法、竹が棟交換とひび割れの接着工事、梅が棟の釘の増し打ちとひび割れ補修となっています。だいたい30坪100平米の家であれば、松のカバー工法だと80~120万円、竹の棟交換とひび割れ接着で20万円前後、そして梅の増し打ちだと5万円前後ぐらいです。
屋根の下地強度を確認して、土台の強度が十分にあれば梅でも良いとしています。基準を満たしていたら、増し打ちで対応するようにしています。下地が半分以上生きていれば、それだけで十分な強度を得て、さらに15年ぐらいは被災しないでしょう。
ただ、一番災害予防が必要なのは築30年ぐらい前の瓦屋根ですね。
瓦屋根のラバーロックは地震・台風対策になるのか?
- もっとも予防工事が必要なのは約30年前の瓦屋根の家。その中で、気になったのがラバーロックという瓦屋根を接着してしまう方法です。果たしてその効果とは?
石川―――
ラバーロックは効果が出る場合と出ない場合があります。効果が出る場合は、元々、瓦が屋根に固定されています。そもそも、ラバーロックというのは何をするかって言うと、屋根にある瓦を接着材で1枚1枚をつなぎ止める工法です。
何のためにするかと言うと、全ての瓦を接着し揺れなくするためと聞いたら効果ありそうですよね?ですが、(瓦が下地に)1枚も固定されていなければ耐風力は(ラバーロックをしない時と)変わらないんですよ。地震に対しては、多少の揺れでは崩れないというのはあるかもしれませんが、そもそも屋根に固定されていなかったら揺れます。
元々の瓦が固定されていないと意味がなく、屋根の端は固定されていても、真ん中は固定されていなければ屋根は飛んでしまいます。そこで、ラバーロックをすると真ん中も飛ばないようになります。
なので、ラバーロックをするなら下地への固定は必須。そうしないと意味がなく、端だけを止めても効果はありません。実際に自分で実験をした結果、4枚に1枚は固定されていないとラバーロックの効果は出ないということが分かりました。
―――後編へ続く
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石川商店ではこれからも日々情報を発信し、お客様の声に耳を傾けていくので、屋根の悩み事はお気軽にご相談ください。
最後までご覧いただきありがとうございました。
後編では、ラバーロック他、予防工事についてさらに掘り下げていきます!ぜひお楽しみに!
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