アスファルトシングルとはすごく大雑把に説明すると、1m40㎝ぐらいの大きさで天然石を砕いたチップみたいものがくっついているゴムマットです。ゴム素材で防水性に優れ、スレート同様に軽く、そしてスレート違って割れの心配がほぼないという強みをもっています。
しかもゴム製なので、屋根に職人さんが上がって歩いても踏み割れをする心配がないので、お客様にとっても業者側にとってもメリットのある屋根材です。
今回も石川さんに、あれやこれやとマニアックな屋根の素材の話を深掘りしましたので、是非最後までお楽しみください。
本記事はインタビューを記事化したものです。
みんなの屋根の相談所|石川商店 – YouTube
※前回のインタビュー記事はこちら
本記事の目次
アスファルトシングルは防災にも強いけどあまり認知されていない
大久保―――
アスファルトシングルについて僕も少し調べていたのですが、地震など災害にも強い屋根材なのでしょうか。
石川―――
そうだと思います。基本的に建築基準法だと瓦とか重い屋根材を使う時は、家の強度を上げるための対策を求められるのですが、アスファルトシングルのような軽い屋根材であれば、全体の強度に影響が少ないので問題ありません。
単純に、家の骨組みの強度が一緒で、屋根が重いか軽いかでいったら、軽いほうが地震に対しては有利です。その上で、素材としての耐久性が高いアスファルトシングルのほうが、スレートよりも地震に強いと言えますね。
大久保―――
アスファルトシングルって万能ですね。
石川―――
そうなのですが、アメリカでは屋根の7割ぐらいには使われていて定着しているものの、日本では30~40年前にはけっこう使われていた後、使われなくなってしまい全然広まっていないです。
これは個人的な見解ですが、使われていた当時は、柔軟性が高く円形を伴う屋根にも使えて便利と言われていたものの、風で飛んだり、剥がれたりするといった症状が散見されたからなのかと思っています。それで「アスファルトシングルはダメ」みたいなイメージがついてしまったのかと。
ただ、それは日本がアスファルトシングルを真似して作ったものが多く使われていて、それがダメだったのが原因なのです。
大久保―――
アスファルトシングルが、ダメだったわけじゃなかったということですね。ということは、アメリカで使われている素材であれば問題なかったでしょうか。
石川―――
そうですね。ですが、アメリカのものだとしてもピンキリなのでちゃんとしたメーカーのものを使えば問題ないです。
メーカーによる違い・選ぶ際の注意点は?
大久保―――
メーカーによる違いはあるのですか。
石川―――
基本はベースの素材にアスファルトを吸収させ、天然石のチップをまぶしてゴムマットみたいなかたちにしていくのには変わらないのですが、使う素材や作り方など、細かい部分で「強度をどうやって上げるか」はメーカーによって、その取り組む方向性が違います。固定に使うセメント材のようなものが、多くついているかどうかといったところで若干の違いがありますね。
大久保―――
なるほど。もうそこまでいくとかなり専門的ですね。何か一般の人が屋根材にアスファルトシングルを選ぶ際に気をつけておくことはありますか。
石川―――
日本で使われているメーカーの主流は3~5くらいだと思いますが、基本的にはそこであれば問題ありません。なので、どこのメーカーのアスファルトシングルを使うのかというところ確認しておいたほうがいいですね。
あと工事する時に使用するマニュアルに、接着剤の役割を果たすセメントの使用について、割と曖昧に書かれているものが多いのですが、釘打ちと接着を両方併用してやっていくことが基本になっています。だから取り付ける際には、「釘だけじゃなく、セメントも併用して工事してくれますよね?」ということは確認したほうがいいかもしれません。
- 【参考】アスファルトシングルの主要メーカーと製品名
アスファルトシングルの耐久性について
大久保―――
アスファルトシングルの耐久性、耐久年数はどれほどなのでしょうか。
石川―――
メーカーによっても多少の違いはありますが、基本的に海外製品を商社が販売しているので、まず保証の仕組みが違います。40年間は保証します、といった長期間の保証がつくのですが、築年数に応じて保証できる範囲パーセンテージが下がっていくという仕組みです。
経年劣化以上の被害が出た場合は、そこに関して保証してくれます。
大久保―――
海外製品と国内製品の違いは他にもありますか。
石川―――
日本は保証が2年だけで、とりあえず2年もてば屋根材としては問題ないということになっています。ちなみに防水に関しては屋根材だけではなく防水シートとあわせて10年というのは、どの屋根材でも同じです。
アスファルトシングルの施工について
大久保―――
アスファルトシングルの施工はそれほど難しくないと聞いたと思うのですが、どういう仕組みで取り付けられるのでしょうか。
石川―――
基本的にはスレート屋根と同じです。唯一違うのはセメントを併用して使うので、釘打ちに加えてセメントの塗布が重要な工事になります。違いとしてはそれぐらいなので、スレート屋根材を常日頃取り扱っている業者さんなら問題なくできるでしょうね。
本場のアメリカでは割とDIYの一環として自分達で修繕してしまう人もいるみたいです。専門の道具というものが特にないので、カッターと金づちがあれば一般の人でもできると言えばできる感じですね。
大久保―――
カッターで切れるとは。
石川―――
工事自体は簡単と言えば簡単ですけど、もちろん防水の知識や屋根材の知識は必要です。
大久保―――
そうですね。もちろん高所での作業ですから、安全な足場を作ることも含めて素人には中々難しいですよね。
アスファルトシングルのデメリット
大久保―――
アスファルトシングルのデメリットというか弱点みたいなものはありますか。地震には強いですが、台風のような強風には弱いなど。
石川―――
基本的にはそのような強風対策も強化されています。あと「強風対策施工」というものがあって、通常が釘4本とセメント塗布のところ、6本とセメントで取り付ける施工です。この施工によって設計上は風速50mまで耐えられるようになるので、ほぼどこでも取り付けられます。
あえてデメリットと言うなら、表面についている天然石のチップが多少剥がれ落ちてくることで、ベランダとかに謎の石粒が落ちているということがあるかもしれませんね。表面上の石粒なので、メーカーの人いわくそれによって性能に影響することはないとのことです。
あと、天然石のチップなので基本的に変色とかはしないです。
大久保―――
ということは見た目もそこまで損なわれないと。
石川―――
素材だけ見ればそういう意味なのですが、チップがあることで表面がざらざらしていて、雪が落ちにくかったりもするのですが、その影響で苔が生えやすいというのがあります。素材そのものは汚れないですが、苔がすごいというのを見たことがありますね。
大久保―――
変色はしないですけど、苔とかの汚れによって見た目が変わってしまうことがあるということですね。
石川―――
そうですね。多少ですがあります。
結論:アスファルトシングルは優秀
大久保―――
聞けば聞くほど、アスファルトシングルって魅力的な屋根材ですね。
石川―――
そうですね……。今のところはそう思っています。ただ屋根材も技術が向上して新しい屋根材が開発されることもあるので、数年、数ヶ月後には違う屋根材のことをおすすめしているかもしれません。
大久保―――
まさにスレートがそうでしたね。
石川―――
そうですね。スレートはアスベストが使えなくなったこことでおかしくなりました。とにかく現時点では、スレートから変えるならアスファルトシングルが一番合理的ですね。
石川商店は全国どこからでも屋根の相談を受け付けています
みんなの屋根の相談所:石川商店では、よりお客様に近いところでお客様の悩みにお答えできるよう活動し、屋根の専門家+様々な知見をもったライターが、あれやこれやと知恵を絞りながら、役に立つ情報発信を届けていきます。
石川商店ではこれからも日々情報を発信し、お客様の声に耳を傾けていくので、屋根の悩み事はお気軽にご相談ください。
次回は素材の話ではなく工法についてお伺いしていきます。カバー工法って聞かれたことありますか?屋根の工法について詳しく石川さんにお聞きします。来月も是非楽しみにしていてください!
最後までご覧いただきありがとうございました。
石川商店からのお願い
記事を最後まで読んでいただきありがとうございます。
お客様の率直な感想をいただくため「役にたった」「役に立たなかった」ボタンを設置しました。
また、もしもっと知りたいこと、分かりづらかったことなどあれば下のコメント欄にご意見いただければと思います。
日々屋根にお困りのお客様にとって必要な情報をお伝えするために、ご参考にさせて頂きます。