ー教えて屋根屋さん! 第119回ー
「どの屋根材を選ぼう」
ウェブサイトやパンフレットを見ていると、瓦、金属、スレートなどさまざまな屋根材が出てきます。
そのなかでも、とくに分かりにくいのが、「スレート」と「セメント瓦」の違い。
この2つは一体、何が異なるのでしょうか?
(ちなみに厳密にはスレートも天然のものと人工のものがあります。一般的には人工のものを化粧スレートと呼んでいます。
現在では天然石を使った天然スレートが一軒家に使われることはほとんどありません。スレート=化粧(人工)スレートと解釈してくださいませ)
スレート(化粧スレート、人工スレート)
スレートとは、主原料であるセメントに繊維を混合し、強度を高めることで、6ミリ前後まで薄くできた屋根材。昔は石綿(アスベスト)を含むことが多かったです。
コロニアルやカラーベストといった名前を聞いたことがある人もいるかもしれませんが、これらはすべてスレートの商品名です。
安価かつ短期間で工事できるため、人気を集めていますが、屋根にぴったりくっつく形で施工するため、暑さを防ぎきれなかったり、結露が発生しやすかったりするなどの欠点があります。
また表面を塗装しているので、年月が経つと、徐々に塗料がはげてきたり、コケが生えたりして、見た目が汚くなってしまいます。
金属屋根材のように、さびて穴が空くことはありませんが、外観が気になる人は、10年に1回は再塗装する必要があります。
セメント瓦(コンクリ瓦)
セメント瓦はほぼセメントだけでできている瓦。
PC瓦(プレスセメント瓦)と呼ばれることもあります。
セメントには片栗粉のように、水に流すと固まる性質があります。
しかし、それだけだと強度が弱いため、少なくとも2~3センチ程度の厚みが必要です。
厚みがあり重量もあるので、瓦同様の工事方法をすることが多く、屋根材と下地の間に空気層ができ、それが暑さや結露防止に役立ちます。
セメント瓦も表面を塗装しているため、スレート同様、10年に1回は再塗装が必要です。
◆その他の類似の建築材料
モルタル
セメントに砂を混ぜたものを指します。
コンクリート
モルタルにさらに砂利を混ぜて、強度を高めたものを指します。
それぞれの違いは分かりましたか?
メーカーによっては独自の定義を持っているところもあるので、
セメント瓦と言っていても、成分としてはコンクリートの場合もあったりします。
気になる方は事前に確認しておきましょう。
一見、似ている屋根材でも、特徴や役割があります。
それらを理解した上で、我が家の屋根にぴったりの屋根材を選んでくださいね。
次回は、「アスベスト屋根材を解体するにはどうすればいい?」についてお話しいたします。
創業75年、屋根専門石川商店の三代目。
石川弘樹(いしかわひろき)です。
【資格】 1級かわらぶき技能士
瓦屋根工事技士
全日本瓦工事業連盟認定 瓦屋根診断士
全日本瓦工事業連盟認定 耐震化講師
耐震プランナー
増改築相談員
古民家鑑定士
ホームインスペクター(住宅診断士)
ジュニアリフォームソムリエ
リフォームスタイリスト1級
リフォーム提案士
ライフスタイルプランナー
【趣味】 ワンピース(マンガ)
【目標】 2級建築士
瓦割り世界大会初代チャンピオン
【ブーム】 ブラッククローバー
【困り事】 正月食べ過ぎて5kg増量
DIYで作った個人ブログはじめました。
37歳おっさんが残りの半生での日々のチャレンジを綴っています。
http://hiroki-ishikawa.info
屋根で損する人をゼロにしたい、屋根屋の三代目です。
石川商店からのお願い
記事を最後まで読んでいただきありがとうございます。
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また、もしもっと知りたいこと、分かりづらかったことなどあれば下のコメント欄にご意見いただければと思います。
日々屋根にお困りのお客様にとって必要な情報をお伝えするために、ご参考にさせて頂きます。
始めまして早速ですが 塗装の件についてお尋ねします。今家のリフォームで外壁と屋根の塗装を検討してますが、いろいろ調べていくうちにスレート瓦とセメント瓦では塗装方法が違うという事が分かってきました。
わたしの所はセメント瓦で、施工は2000年頃です。近くの業者はスレート扱いで問題無いと言っています。一方水谷ペイントの解説を見ると水谷が開発したプライマーと塗料が良いとあります。適切な対処方法を教えて頂ければ有難いです。メールアドレスはiwao_miyajima@tk2.so-net.ne.jp です。
宜しくお願いします。
みやさん さま、石川商店の石川弘樹です。
まずセメント瓦が、薄いスレートではなくて、厚いセメント (コンクリ) 瓦で間違いなければ、塗装方法というか、使う下塗り剤を、特殊なモノにする必要があります。
後ほどくわしくお話ししますが、下塗りのシーラー (塗料の接着剤) を「 浸透シーラー 」というモノを使う必要があります。
浸透シーラーを使えば基本的に、塗料はどこのメーカーを使っても、あまり違いはないと思います。
もちろん塗料の材質
フッ素系> シリコン系> アクリル系
によって保ちと金額に、品質差はあります。
それを踏まえ、以下は一般的な屋根塗装の方法です。
屋根塗装の流れは、
1、高圧洗浄、金属ケレン
2、割れ修理、棟交換など屋根のメンテナンス
3、屋根材にシーラー (屋根材への塗料の接着剤) と、金属にサビ止めをぬる
4、塗料を1度ぬる
5、乾燥
6、塗料を2度ぬる
7、乾燥
8、目地切り (めじきり= 水抜き部の塗料による塞がりを剥がす、雨漏り防止作業)
屋根塗装の、いちばんのコツは「 塗る下地を、いかにととのえるか 」だと思います。
つまり塗装前に、屋根材の汚れを落としきり、金属部は既存の塗膜をはがしきる、のが重要です。
なのでまず、屋根材の高圧洗浄や、金属部のケレン (やすりなどで金属の塗膜をはがす作業) を行います。
その上で、屋根材の割れ修理や、棟交換といった屋根のメンテナンスが終わったら、塗料の接着剤である「 シーラー 」をぬります。
このシーラーですが、通常のモノは屋根材の表面にとどまり、屋根材と塗料をくっつける役割をもちます。
ただセメント (コンクリ) 瓦は、屋根材の表面がポロポロと崩れる性質を構造上しています。
そのため、シーラーを塗ったとしても、塗った部分の基材がポロポロはがれるので、塗装が長持ちしません。
そこで「 浸透シーラー 」を使います。
このシーラーは、そのポロポロする層を浸透して、屋根材基材までいっしょにくっつけて固まります。
なので、この上に塗料をぬれば、塗装は長持ちします。
ちなみに、セメント (コンクリ) 瓦の製造メーカーで言うと「 モニエル 」、商品名で言うと「 ホームステッド 」「 センチュリオン 」あたりが、有名です。
以上、参考になれば幸いです。
また何か新たな疑問などございましたら、お気軽にご相談くださいませ。
石川商店 石川弘樹