ご自宅の瓦屋根は防災化が必要か。地震や台風に強いかの見分け方。

石川 潤
石川 潤
  • 近年地震や大雨などの災害が多発しています。そのたびに屋根にも多くの被害が出ています。特に瓦屋根の方はその重さゆえに落下したときのことを心配されると思います。ご自宅の瓦屋根が災害に強いのか確認してみましょう。

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防災瓦とは

防災瓦の構造がわかる写真

防災瓦とは瓦と瓦を引っ掛け合わせる構造でしっかりと屋根下地に固定できます。

従来の瓦屋根は桟木(さんぎ)という木材の上に瓦を置くか、釘打ちしているだけでした。
防災瓦の方はというと、釘だけでなく瓦同士がアームで補強し合い地震が来ても崩れにくく、台風がきても飛ばされにくい構造になっています。

防災瓦のメリット・デメリット

防災瓦に変えることで、台風や地震に対して色々なメリットがあります。

しかし、これはどの屋根材にも言えることですがデメリットが全くないわけではありません。

それでは、防災瓦に変えることでのメリット・デメリットを見ていきましょう。

防災瓦のメリット

地震や台風でも崩れない・落下しにくい

前述の通り、従来は桟木という木材の上に瓦を引っ掛けて置くだけか釘打ちのみだったので地震や台風に弱かったのですが、防災瓦は特殊なロック構造になっており瓦同士がしっかりと結束されているので地震での揺れや台風の強風にも強い構造となっています。

その為、ズレや落下などのリスクを大幅に減らします。

 

 

耐久性は約60年間、ほぼメンテナンスが不要

防災瓦も従来の瓦同様に、粘土とゆう薬を高温で焼き締めた陶器質の屋根材です。CASBEE建築物総合環境性能評価システムによると瓦の耐久性は約60年と化粧スレートの耐久性約30年より2倍の評価を得ています。

他の屋根材と比べて長い目で見ると非常にコスパのいい屋根材となっています。

従来の屋根瓦よりも軽量

ほとんどの防災瓦は従来の屋根瓦よりも軽量化されています。

製品によっては従来の屋根瓦の半分の重量になっているものもあり、防災瓦に葺き替えることで地震の際に建物にかかる負荷の軽減につながります。

防水性も高い

防災瓦は防水性にもこだわって作られており、雨水が流れ落ちやすい設計になっています。

そのうえ、瓦そのものが野地板との間に隙間を作るため湿気がこもりにくく結露しにくい構造になっています。

遮音性・断熱性も高い

これは防災瓦に限らずですが、粘土瓦には音を吸収する力がある為雨音などを軽減させます。

また、熱を蓄える容量も大きいため断熱性にも優れています。

防災瓦のデメリット

設置費用が高い

防災瓦と従来の瓦の価格差はほとんどありませんが、他のスレートなどの屋根材に比べると費用が高くなってしまいます。

また、施工方法が特殊な為施工費用も高くなります。

しかし瓦自体は約30年間はメンテナンスも不要なのでトータル的なコストで考えると他の屋根材より安くなる可能性があります。

割れる可能性がある

瓦屋根は強い衝撃により割れる可能性があります。

防災瓦の場合でも、特殊な施工方法でズレや落下のリスクは抑えられていても、従来の瓦と同じく割れる可能性はどうしてもあります。

スレートや金属屋根と比べると重い

従来の瓦よりも大幅に軽量化されてはいますが、スレートや金属屋根と比べるとどうしても重量は重くなってしまいます。しかし、現在の耐震基準に則って建てられた建物であれば瓦の重量でも耐震性に問題はないと言われています。

実は災害時に瓦屋根で壊れやすい部分は「棟」。

大きな地震や台風のあと、ニュースなどで金属屋根が飛んでなくなっている屋根や瓦が崩れてしまった屋根が映し出されます。

いつか来るかも知れない大きな災害のとき、我が家の屋根は大丈夫なんだろうかと少し気になりますよね。

瓦屋根においては特に「棟」と呼ばれる突起のように出ている部分は被害が出やすい場所です。

出っ張っている分、台風の強風をもろに受けます。

また屋根面同士の接点なので地震の際に揺れの力や歪みが集中しやすく、さらに一枚のずつ広げてある瓦に比べると何段か積んでいる分、高さと重さがあり揺れにも弱いです。

ご自宅の棟が地震や台風に強いかは銅線の有無で判断できる。

では実際ご自宅の棟は地震や台風に強い作りなのでしょうか。

ご自身が建てたり新築で購入した場合にはどんな工法でいつ頃工事したのかわかったりしますが、ご両親から引き継いだ場合や中古で購入した場合には状態をよく伝え聞いていないことも多いようです。

そういう場合でもある程度の確認ができます。

 

棟に何段か積まれた瓦(熨斗瓦)から頂上の瓦(冠瓦)にかけて銅線をぐるっと回してあるのが見える場合、以前の工法で施工されたものです。

大回し緊結とか胴回しと呼ばれる方法です。

棟の上部の瓦同士を縛り重さと中の土で固定してあります。

 

 

これに対してそのような銅線が見えない場合は最新の工法で施工された可能性が高いです。

遠くて見えないかもしれませんが頂上の瓦すべてに釘が打たれていてその釘の頭の周りにゴムのようなパッキンが見えるなら確実です。

ガイドライン工法と呼ばれるもので屋根上部に支柱を立てて芯材を通しそれそれぞれの瓦を銅線等で固定してあります。

震度7の揺れや台風の強風にも耐える最新の工法です。

ご自宅がこの棟であれば安心です。

銅線で外から縛ってある方がなんとなく強そうにも見えますが、実は逆なのです。

 

もちろん以前の工法だから危険であるとかすぐに変えないといけないということはありません。

以前といっても東日本大震災まではごく普通に施工されていました。

そうすると施工後10年くらいなので十分な強度を備えていると考えられます。

棟の下の漆喰がはがれるだけでなく中の土が屋根の上にこぼれ出ている場合や棟がジグザクに曲がっていたりする場合には棟の劣化が進んできているので点検や相談をする時期でしょう。

 

洋瓦の屋根の場合は棟部分の瓦は積み上げられておらず、基本的には個々の瓦は釘で芯材に固定されているので構造的には地震や台風にも強いといえます。

 

今から棟を災害に強くする方法は2つ。耐震化の方法。

古い工法でしかも劣化が目立って心配される場合、棟を地震に強くするということができます。

棟だけ強くしても意味がないとも思えますが、屋根面に比べると棟は圧倒的に壊れやすく、また壊れた棟が屋根の他の部分を壊したりするので棟の強化だけでも効果はあります。

これから20年30年と長く住むことを考えていないような場合にはこの棟だけの耐震化はおすすめです。

 

それは棟をガイドライン工法で作り直す方法です。

一つは現在の棟を取り外し、屋根に支柱を立て個々の瓦を固定しシルガードで固めます。

もともとの瓦を再利用すれば従来の雰囲気を変えずに耐震化できます。

三段積み、既存の瓦を再利用で、20,000円/m(解体費込み)くらい。

工事事例はこちら。

 

棟瓦の修理費用はどのくらいかかるのか?修理方法とその費用について解説

 

もう一つは棟に積む熨斗瓦をなくし、冠瓦だけを棟として取り付ける方法です。

一本伏せという方法です

現在の棟を取り外し、棟金具や棟木をつけて冠瓦を固定します。

棟の高さがなくなり見た目が変わってしまいますが、使用する瓦が減り重量も軽くなるためメリットは大きいです。

また使用する材料が少なく済むのでコスト的にも安くできるという利点もあります。

18,000/m(解体費込み)くらいです。

工事事例はこちら。

【工事事例 棟の交換】 地震に強い屋根へ 和瓦の棟の取り直し工事

 

家の耐震化や修理は今後どれくらい住むのかというのをベースに必要な限度で行うのが基本です。

何十年と長く住むような場合には屋根全体の葺き替えの検討も必要となってくるでしょう。

 

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